中小企業のM&Aにおける「磨き上げ」実践③<リスク整理と非財産的価値の可視化編> | 法律コラム | 企業のお客様に特化した弁護士法人 世田谷用賀法律事務所

 

COLUMUN

COLUMN
2025.07.22 | Vol.293

中小企業のM&Aにおける「磨き上げ」実践③<リスク整理と非財産的価値の可視化編>

【中小経営者のためのM&A・事業承継講座 vol.6】

弁護士の藤間です。

日々、中小企業さまの事業承継・M&Aに関する法的アドバイスなどをする中で、中小企業の経営者さまに事前に知っておいてほしいM&A・事業継承の基礎知識をシリーズでお伝えします。


前回のコラムでは、「組織の見える化」における弁護士の活用ポイントついて解説しました。


今回は、第三者承継(M&A)を見据えて事業を「磨き上げる」うえで、避けて通れない「リスク整理」と「非財務的価値の可視化」について、弁護士がどのように活用できるかを解説します。

 

弁護士の役割①「見えにくい危険」を棚卸しすること

M&Aの買い手にとって、リスクは「見えないものほど怖い」と言われます。


たとえ、現在は顕在化していなくても、将来発生する可能性のある法的リスクや、契約・労務・取引構造の中に潜む曖昧さは、買い手の評価や条件交渉に大きく影響を及ぼします。


こうした“見えにくい危険”を適切に棚卸しし、説明可能な状態に整えることが、まさに弁護士の役割です。

 

中小M&Aガイドライン(第3版)でも、磨き上げの要素として「リスクの可視化と適切な対策」が明記されており、その手段として法務・税務・労務などの多角的視点からの検証が推奨されています。

 

弁護士の役割②M&A本番前からリスクを洗い出す

では、具体的にどのようなリスクが問題となるのでしょうか。


以下は、実務上よく見られる例です。

 

  1. 古い契約書や口頭合意のまま継続している主要取引先との契約
  2. 定義が曖昧な業務委託契約や成果物の著作権の帰属問題
  3. 雇用契約の不備や、固定残業代制度の不適切運用
  4. 下請法、景表法、個人情報保護法などの法令違反の懸念
  5. 顧客クレームや行政指導歴に関する社内の共有不足

 

弁護士は、これらのリスクを洗い出す「法務デューデリジェンス(以下、法務DD)」の役割を、M&A本番前から担うことができます。


法務DDというと買い手側のものと考えられがちですが、実は売り手側にとっても、事前に自社の弱点を把握し、説明準備をしておくことは極めて重要です。

 

私は実際に、情報漏洩のリスクが潜在していたEC企業に対して、顧客情報の保有範囲や委託先との再委託条項を見直す支援を行い、結果的に買い手側からの追加質問を減らし、最終的な契約交渉をスムーズに進めた経験があります。

 

弁護士の役割③非財産的価値を発見すること

また、こうしたリスクを洗い出す過程で、「非財務的価値」を発見することもあります。


たとえば、長年の地元密着型サービス、業界特化型の顧客層、一定の品質基準で蓄積されたノウハウなどは、決算書には現れない「競争力」そのものです。

 

このような価値は、単に主観的に「ウチは地元で信頼されています」と言っても説得力に欠けます。


弁護士は、第三者から見て納得感のある資料の整備、証拠の体系化、説明の組み立てなどを行い、買い手にとって安心できる形に整えることが可能です。

 

たとえば、職人の高い技能を売りにしている製造業では、技能伝承に関する仕組み(教育期間、評価制度、ツールなど)を文書化し、弁護士が業務委託契約や秘密保持契約を整備した結果、「人材面の強み」が評価され、買い手からの譲渡対価が上方修正された事例もあります。

 

弁護士の役割④リスク整理と非財務価値の可視化

さらに、リスク整理においては、「どこまで開示すべきか」の判断も弁護士の重要な職務です。


全てを包み隠さず出せば良いというわけではなく、守秘義務や従業員のプライバシー、取引先との関係など、慎重に調整が必要です。


弁護士は、交渉に先立って開示方針を立て、秘密保持契約(NDA)を活用しながら、安全かつ効果的な情報開示を設計します。

 

このように、M&Aに向けた「磨き上げ」ステップの最終段階である「リスク整理と非財務価値の可視化」は、まさに弁護士の力を最大限に活用できる場面です。


企業の目に見えない魅力を、法的に整理し、買い手との信頼構築につなげる。


このプロセスが整ってこそ、安心してバトンを渡せる承継が実現します。

 

次回は、いよいよM&Aの実行段階に入り、契約交渉や条件調整における弁護士の実践的な支援について取り上げていきます。

 

お困りごとは、弊所弁護士へご相談ください

弊所では弁護士事務所には珍しい、オンライン予約システムを導入しております。


サロン予約のように、ご希望の相談メニューとご都合の良いお時間帯をお選びいただけると好評です。


こちらのページにあります「ご予約・お問い合わせはこちら」よりご予約ください。


もちろん、お電話でもご予約承っております。お電話での弁護士へのご相談は…℡03-3709-6605


ご相談がありましたら、お気軽に当事務所までご連絡ください。 

 

CONTACT US

「ご相談者様の明日の幸せのために」
「事業や人生に寄り添った仕事がしたい」
そんな熱い思いを胸に全力を尽くして
取り組んでおります。
まずはお気軽にご相談くださいませ。