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法律コラム

「既婚男性との間で妊娠」で代表取締役辞任・・・の衝撃
代表弁護士の水谷です。
今月、ある会社の女性代表取締役社長が、「既婚男性との交際及び妊娠」を理由に辞任したニュースがありました。
この方は、他社の社外取締役も辞任されたようです。
既婚男性との交際、妊娠、は役員辞任をすべき事情なのでしょうか。
道義的には、法律的には、どうなのでしょうか。
不倫の社会的、法的責任とは
諸外国では、クリントン元大統領に始まり、現フランス大統領のマクロンに至るまで、不倫その他のスキャンダルは、政治家含め社会的地位とは必ずしも関係していないように思われます。
一方で、ここ日本では、冒頭のニュースに限らず、女性スキャンダルで男性政治家が失墜することはちらほら。
不倫は、どれほどの法的、社会的悪さがあるのでしょうか。
ここ日本では、不倫(配偶者のある人と知りながら交際関係になること)は、あるべき婚姻関係の安定を脅かすものとして、民法上の不法行為になります。
ただし、当然ながら、刑事的に処罰の対象になるわけではありません。
民事的には「違法」でも、刑法上の違法性を伴うものではありません。
刑事的に違法な(処罰される)行為は民事的にも違法な行為となり、損害賠償の対象となりえますが、
その逆は必ずしもそうはならないのです。不倫は、そのひとつの例といえます。
では、不倫が、あるべき婚姻関係の安定という価値に対して「違法」だとして、
別に処罰される行為わけではないのに、そのことはただちに、
役員を辞任すべき理由になるのでしょうか。
不倫が懲戒事由になるか(雇用関係の場合)
不倫のご相談で「会社をクビになるかも(あるいは何等かの処分を受けるかも)」と心配される方は多いです。
しかしながら、実際、社内恋愛があったりして、会社の中がぎくしゃくするときは、多くの会社は、一方又は他方を人事異動(部署異動)して事態を鎮静化させていることが多く、「懲戒」として減給、休職となったり、はたまた解雇となる事例には、ほとんど出会いません。
実際には、不倫があったという理由だけで従業員を懲戒解雇とすることは、
それだけでは解雇権濫用と評価され、解雇無効となる可能性が高いと考えられます。
裁判例でも、昭和41年の東京高裁の裁判例で、バス運転手と女性車掌の不倫関係について懲戒解雇処分を相当としたものがあるほかは、以後は、不倫(あるいは社内不倫)自体は「会社の信頼を失墜させた」とか「職場の風紀・秩序を乱した」といえる具体的な事情がないことを理由として、懲戒解雇は重すぎて無効としたものがほとんどです(旭川地裁平成元年12月27日判決、大阪地裁平成28年5月17日判決等)。
もっとも、学校における教え子との恋愛であるとかの具体的に職場の風紀と密接に関連するものや、セクハラであるといったそれ自体刑法上の違法性も伴うものについては、懲戒解雇相当と判断されるものがあります。
不倫は役員解任事由になるか(会社役員の場合)
会社の役員の場合は、会社との関係は委任関係であって雇用関係ではありませんから、解任にあたっては、むやみな解雇を無効とする解雇権濫用の法理ははたらかず、解任にあたって「正当な理由」があるかが問題となります。
不倫が直ちに役員解任事由となるかについて正面から論じた裁判例は見当たりませんが、
役員の解任には、「業務執行の障害となるべき客観的状況がある場合」であることが必要とされますから(大阪地裁平成10年1月28日判決)、不倫があったからといって、業務に専念しないとか、その特定の関係性から会社の信頼を損なわない限り、ただちに解任事由とはならないのではないかと考えられます。
「解任」を待たずに「辞任」したことのへの評価は・・・
冒頭の事例に戻ります。
いうまでもなく、「辞任」は「会社から辞めさせられる(解任)」を待たずに自ら「辞める」ことです。
みてきたように、不倫(たとえ妊娠あっても)はそれ自体役員をやめるべき法的理由となるものではありません。
それにもかかわらずの今回の辞任は、社会的な信頼の失墜を避けるため、自ら退いたというのが通常の見方であろうと思います。殊に、不倫の場合には、傷ついているであろう相手配偶者への配慮も不可欠ですから、報道されるような大企業では、当人がそのような結論に至るのもやむを得なかったことだと思います。
一方で、冒頭の会社はコロナ禍を受け業績は好調であったとの報道もあります。
そのような中ですから、今回の件が、日本でのことなく、大統領クラスがスキャンダルを起こしてなお活躍し再任する諸外国であったらどうか…と考えると、何とも複雑なところではあります。
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